裏の世界から

布片を縫い合わせて作った危険な気球に乗って、裏の世界に入った。表の世界にはない闇と安らぎがあり、私のような者には心地よかった。淫らで薄汚れていて、人の手で作られた偽物の物語がなかった。表の世界では死んだように生きていた。私は自分が嫌いで、人からも嫌われていて、全てを持っていながら、全てを失っていた。

裏の世界で知り合った女性がいた。抱きしめ合うと、温かくて、それだけで良かった。胸に耳を当てると、とくとくとく、とくとくとくと鳴っていた。それはどんな音楽よりも美しい音だった。

二人は群青色に三日月の紋様の入った飛行船に乗って、表の世界に入った。女のささやかな夢である、アイスクリーム店を開くために。海辺に石垣を積み、帆布で屋根を作り、お店を作った。手作りの小豆のアイスを天ぷらにしたものが看板メニューだった。

私たちは表の世界に入ると、醜い姿だった。しかし、それで良かった。表の世界で抱きしめ合うと、ひんやりとした肌が心地よかった。その冷たさを確かめ合うために何度も抱きしめ合った。

表の世界の人々は、美しいものや優しさや正しさを求めすぎているように思えてならなかった。私たちの姿は、本当は醜く、正しくなく、薄汚れているというのに。

ひどく疲れた顔で二人は見つめ合った。目の下に隈ができていて、皮膚がただれて、ひどい顔をしていた。ひどい顔をしているねと笑いあった。

この物語は偽物ばかり。偽物ばかりだから、ガラクタ。ガラクタだから、収集癖のあるカラスの巣に転がっている。

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