夕べ、ろくに食事もとらずに、濃い目に入れたコーヒーを喉の奥に流し込んで、窓辺で風の音を聴いていた。窓ガラスを叩くように吹きすさぶ春の嵐。咲いたばかりのクレマチスの花が散ってはしまわないかと心配になって、鉢を物置にそっとしまった。西の空は黄昏れて、紅に揺れて、幾すじの雲が細くたなびきながら駆けていた。私の心の中に吹きすさぶ風からは逃れる術はなかった。咲かすべき花はとうに散ってしまった。あとに残るは立派な園芸種ではなく、野生を帯びた原種に近い小さな花。どんな風にも耐えうる小さな花の群落は野風に揺れながら、力いっぱい咲いている。
