青い蝶

部屋に青い蝶が飛んでいる。偶然に偶然が重なり、縁と縁が結ばれてたどりついた蝶たち。いつでも逃げて行けるように窓を開け放していていも、窓から外へ飛んでいく様子はなく、狭い部屋ながらも居心地良く過ごしてくれているようだ。部屋の隅に野の花を挿して、白いお皿に砂糖水を吸わせた脱脂綿を置いている。青い蝶たちは時折、蜜を吸っている。結局のところ、私は誰かを幸せにしてあげられる人間ではなくて、気ままな詩人でふらりふらりと世間を渡り歩くだけの能しかない。そのことは十分ぐらい分かっていて、誰の気にも留めないように、そっと生きていくつもり。青い蝶たちは私の寂しさをよく分かっているようで、寂しい気持ちを抱えると、背中にとまったり、手に乗ったりする。声が聞こえるというと世間は眉をひそめるものだけど、私には聞こえる。それは私の胸の中にある本当の声であり、誰にも語らぬ思いでもある。陽気な詩人と陰気な詩人がいるとしたら、私は後者であり、それでいいと思っている。蝶たちは私の代弁者であり、長旅をして望まれてこの部屋にたどりついたから。それは奇跡といってもいい。そして、蝶たちはいついなくなってもいいと思っている。命には限りがあるものだし、愛も永遠ではないように。蝶たちの自由を尊重している。幸せは与えるものではなくて、その人が感じるものであり、与えることができたと思うことは幻想だから。蝶たちもそのことをよく知っていて、私が幸せを感じていることに、満足しているようだ。それは与えるとか頂くとかいうものではなくて、通じ合えるもののみ感じられる恵みだからだ。

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