真っ白な羽毛

「頭に羽毛がついているよ」
君はほほ笑みながら、私の頭上を見ている。私は慌てて、手で羽毛を取り払おうとする。しかし、頭のどこについているのか分からなくて、髪がくしゃくしゃになってしまうと、君はくすくすと笑いながら
「取ろうか?」
二歩進み出て、私の胸の辺りに顔を寄せた。

君の栗色の髪から、咲き始めの桜の花のような甘い香りがして、私はたじろいで一歩後ろへ下がろうとした。その時
「きれいな純白の羽毛」
呪文を唱えるように平坦な口調で言いながら、踵をツンと上げて、私の頭の後ろ側に手を巻き込むように伸ばした。

私は悪さをして怒られている子どものようにうつむいて、徐々に力を抜いて、君に身を預けた。身を預けて目を閉じると、深い海の底に沈んでいくような、絶望にも希望にも似た、深い快楽が体に満ちてきた。

君は髪に触れることなく器用に羽毛を取って、巻き込んだ手を戻して、ハイと囁いた。
私は目を開けて君の目を見つめると、親しみを込めた目で見つめ返して、羽毛をつまんで見せていた。

君への想いは、一方的なものだと思っていたので、親しみを込めて私を見つめる目に、 誰にも語ることなく密かに育んできた愛を告白しようかと揺らいだ。しかし、心を先に悟られないように慎重に制御しようとしていた。

一歩離れると君は戸惑いの色を顔に浮かべた。
君の手に触れないように気をつけながら、指先に持った純白の羽毛を慎重に、両手の指先で羽毛を包み込むようにして受け取った。

私は君の指には触れてはいけないような気がした。君の指に触れてしまった時、私の中に眠っている邪な気持ちが、意に反して伝わってしまい、君を汚してしまうような気がした。

「ありがとう」
ぶっきらぼうに言うと君は目を細めてほほ笑んで
「どういたしまして」
一言残して踵を返して、風のように立ち去って行った。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中