胸の内

伝えたいことはたくさんあるのに、言葉が出てこないので、君の目の前で、胸を開いて見せた。開いた胸の奥に、真っ赤に染まって脈打つ心臓と、黒く光り、触れば切れてしまう突起物のたくさんある石がたくさん零れ落ちてきた。

ああ、なんて醜い胸の内だと顔を歪めそうになったが、君は平然とした顔で石を拾い上げて、「キレイ」と光に翳して角度を変えながら眺めていた。触った指には切り傷ができて、血がにじんでいた。

私は嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちとで胸いっぱいになって、心臓がとくとくとく、とくとくとくと、大きく高鳴った。恥ずかしくなって、慌てて胸を閉じた。零れ落ちた石たちは行き場を失ってしまったが、種のように裂け目から双葉が出て、本葉が出て、芽が伸びて行った。

そうすると感謝の気持ち、親愛の情が自然と豊かな言葉となって表に出てきて、二人を笑顔にした。「君がキレイと言ってくれたから」と照れながら言うと、「醜いものも実は美しいの」と歌うように朗らかに言った。

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