ジャスミン

君の夢を見たんだ
男は女にくったくのない笑顔で話した

女は男の顔を覗きこみながら
それはさぞかし、いい夢だったでしょうね
試すような真顔で

男は、”自分で言うか?”と苦笑いしたが
そんな女をかわいらしく思えた

それで何の夢だったの?
男は一呼吸間を置いて、女を見つめた

大きな沼の中央付近で
小さな船が漂っていて
船の底に
シルクの布をひいて
舟一杯にジャスミンの花を敷き詰めて
その中にふたりが寝転がっている夢

それでね・・・
その沼はね
一度溺れると二度と浮かび上がって来れない
底なし沼なんだ
そして、舟には一円玉ぐらいの穴が開いていて水がひたひたと船底に溜まってる

女は考え込みながら男の見た夢を想像していた
ちょっと怖い夢ね
苦笑いしながら言った
そして、真面目な顔で男を真正面から見つめ

その夢の中で、私はきっと舟の底に穴が開いていることを知っているの
知っていて知らない振りしてる
でも、あなたは船の底に穴が開いていることを知らないの

それで、船が沈みかけていることを知った
あなたがどんな態度を取るか、
私は見定めていると思うの

船の底に開いた穴は、僕が開けたものだったとしたら?

それは故意か、過ちかにもよるわね
女は答えた

それは、恋だ

男は微笑みながら、女の手を握った
女は男の手を一度振り払って
もう一度自分から男の手を握り直した

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