繰り返す夢

野外ステージで
ロックバンドがコンサートを行っている

雨が激しく降っている中
ロックバンドは演奏し
ボーカルはパンチの効いた歌を歌っている

観客は群衆になり、同じ方向を向いて
一つにまとまっている

演奏に陶酔して聞き入っている者
首を縦に振りながら、踊っている者
こぶしを突き上げながら聞いている者もいる

私は青い雨合羽を着て
一人だけ演奏者に背を向けて
観客たちの顔を覗きこんで廻っている

観客の中には
私の古い友人がいて
以前交際した女性がいて
仕事場の人がいて
どこかで出会ったことがある人々もいる

私は、一人ひとりに
自分が訴えたい事を話そうと試みるが
演奏に聞きほれている観客たちは
耳を貸すどころか
私の存在にすら気がついていない

古い友人の肩を揺さぶって
「私はここにいる」
そう訴えたが、演奏に陶酔していて
私には気がつかない
以前交際した女性も、私には目もくれなかった

私は悲しい気持ちを抱えたまま
コンサート会場を後にした

コンサート会場の外には
知らない女性が赤色の傘を差して立っていた

黒髪が長く
瞳がきらきらと輝く
美しい女性だった

そして、温かい声で
「もう、淋しくなんかないのよ」
そうほほ笑んだ

私のそばに近づき
握手を求めて手を差し伸べてきた

私がおずおずと女性の手に触れると
その女性は、みるみるうちに
頭から角が生えて、肌がとろけて、目が飛び出てきて
醜い化け物に姿を変えた

指から伸びてきた長い爪が
私の手に食い込んで、血が滲んだ

私は精一杯の笑顔で
「淋しくなんかないよ」
そう声をかけると
「ごめんね」
化け物は涙を流し、美しい女性の姿に戻った

「ねえ、あなたの行きたいところへ連れて行って」
そう女性は囁いた

淋しいのは、私よりもその女性かもしれない
そう思うや否や
女性は再び、醜い化け物に姿を変えた

そして、私も着ていた雨合羽は破れ
体も醜くとろけて、異臭を放つ化け物に姿を変えた

私と女性は、お互い化け物になって
化け物でいられることの安堵と
真実の姿を認め合い
淋しさを埋めあえる喜びに浸った

手を繋いでコンサート会場に背を向けて
赤い傘を置き去りにして
どこへとも知れぬ旅に出て行った

二人の進んだ跡には
互いの手に食い込んだ爪から落ちた
赤黒い血が転々と落ちていた

人々からどんどん離れて行って
二人の世界に沈んでいった

降っていた雨は、いっそう激しさを増し
赤い傘は逆さまになったまま濡れていた

2件のコメント

  1. 何か感じてもらえて良かったです(^^)
    気に入っている詩です☆
    人の内面・・・
    様々な姿を見せますね
    自分の事すらも分かりませんよね
    認め合う・・・
    簡単なようで難しいし、難しいようで簡単かもしれません。
    相性みたいなものもあるかもしれませんね(^^)

    いいね

  2. 写真が面白いです。
    この詩(で いいのかな)と 合ってる気がします。
    難しいんですが 人の姿と内面を感じさせてもらった気がします。
    深いです!

    いいね

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