夏の終わり

夕飯を終え、キッチンで、暮れていく夕陽を見ている。夏の終わりの気配のする夕暮れ、盛んに鳴いていたクマゼミはヒグラシへ、そして、陽が落ちると、ヒグラシから秋の虫の音に変わる。尾形亀之助の『美しい街』を読む。闇に紛れて、真っ白な紙面に、筆で染みを落としたような美しい詩は、形をなくしつつあり、私自身も像を失っていく。夏野菜の炒め物の香りも、冷蔵庫のコンプレッサーの音も、気配を失い、詩集をポロンポロンとめくる音と、秋の虫のリリリ、リリリと鳴く音だけが響いている。東の空から少し遅れて、満ちた月が山陰から昇ってくる。器の底に残った珈琲を傾けて、月影を映すと、ぼんやりと鈍く光り、東の窓に、灯りが点るように月の姿が映る。

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