夢か現か幻か

山頂から三人乗りのトロッコ列車に乗って山を下る。乗っているのは私と年幼い私と年幼い私の手を引く髪が美しい女性。

トロッコ列車は下りの山道を加速しながら下っていく。ところどころで投げ出されそうになるが三人はてすりにしっかりしがみついている。山を下っている最中に麦藁帽子が風でどこかへ飛んでいった。

トロッコ列車が行き着いた先は、石垣の囲いに囲まれた平屋の一軒家で、庭には芙蓉の花が咲き乱れている。私と女性は一軒家の縁台に座り麦茶を飲んでいる。年幼い私は、虫取り網で芙蓉の花の蜜を吸っているアゲハチョウを追っている。

アゲハチョウは十羽ほど乱舞していて、年幼い私は見事アゲハチョウを虫取り網で捕まえて、緑色のプラスティックの篭に収めた。その動作は無造作で無機的だった。逃げ惑うアゲハチョウたちの中にアオスジアゲハが一羽いて、そのアオスジアゲハだけは捕らえることが出来なかった。年幼い私は、アオスジアゲハを追っていたが、捕らえることが出来るのは、普通のアゲハチョウばかりだった。

年幼い私は無造作にアゲハチョウを篭に納めていった。篭の中の九羽のアゲハチョウはカサカサと音を立てながら羽を動かしていて、一羽のアオスジアゲハは石垣の外へと飛んでいった。

私は女性の顔を覗きこむと、唇が真っ赤で横に長く切れた化け物だった。しかし、私はその化け物にいとおしいという感情を抱いていて、その唇に口づけをした。そこで目が覚めた。

アゲハチョウを網で捕まえている年幼い私も、化け物に愛情を感じている私にも感情らしきものなく、目の前にあるものを無機的に見つめつつ、どこか冷徹だった。思うような期待とは裏腹な結果にもかかわらず、受け入れようとしている。夏の陽光に照らされて全ては夢のようで、現のようで、幻のようだった。

夢の中の女性は、私自身の女性的な感情の具現のような気がした。

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