遠距離恋愛の恋人に、手紙ではなくて、小さな瓶に閉じ込めた青い空を届けることにした。恋人は淋しがりやなので、言葉を届けると余計に淋しがる。終わりに向かっている物語を読んでいるようだと。わたしを恋しく思っているなら、今すぐに会いに来てほしいと言われた。

何もかも放りだして行きたいところだが、そういう訳にもいかず・・・

この辺で一番空が美しい丘で、小さな瓶に青い空を閉じ込めて、コルクで栓をした。瓶の中で青い空と白い雲がきらきらと流れていく。ガラス瓶に光が乱反射して七色がにじむ。

これなら淋しがりやの恋人も、今度会いに行くまでは淋しくないかもしれない。

サンダルをはいて、駆け足で、街かどのポストに投函した。ポストの中でダイレクトメールやら、お礼状やら、懸賞の応募葉書きやらに紛れて、青い空はきらきらと輝いていることだろう。赤い自転車に乗った郵便配達夫が、淋しがりやの恋人のもとまで届けてくれるだろう。

恋人が淋しくないように、と思い詰めていると僕の心にぽっかりと穴が空いてしまったようで、無性に恋しくなってしまった。何もかも放りだして、列車に飛び乗って、これから会いに行くことにした。あとは帰ってから何とかすればいい。

青い空が入った瓶は、僕が到着した後に届くだろう。二人で封を開けて、広い空に戻してやろうと思った。

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