薄汚れた・・・

美しい闇の中で三日月が落下して泣いていた。光が乱反射して、沼の中に沈もうとしている。世界が壊れていくのか・・・いや違う。壊れているのは私の方で、落伍者の現実を映すように激しい雨が叩きつけていた。長い夢を見ていた。カーテンを開けると、空は白みかけていて、つけたままのテレビはこの世の終わりを宣言したような殺伐とした顔の神学者がもっともらしいことを言っていた。喉がからからに乾いていて、水道水をくんで飲むと、生ぬるくても美味しかった。幼い頃に愛に飢えた人が大人になって、確かな愛にすら安心感を持てないように、私は未だに心の渇きをしのげないでいる。自分の不確かさや、愚かさや、いつ間違いをしでかすのではないかと恐れていて、自由ではない。真っ白な布を穢すように、血でシミをつける。黒くしずんで薄汚れた私のようなものでも、自分だけの居場所があればいいのに。アゲハチョウが飛んでいる風の向こうに花が咲いていて、光が渦巻いていて、その中に愛がある。壊れたオルガンを弾いている奏者は、孤独に犯されている。私は遠くからでも音色を聞きつけて、耳を澄ましている。雑踏の音や人の囁き声は耳に入らない。ひとすじの想いは矢の如く放たれて、その場所へ向かっている。

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