風 船

お祭りの日に買ってもらったばかりの風船をつい手放してしまい、空高く舞い上がって、どんどん遠くへと離れていってしまった時のような悲しみを受け止めている。それは色々な模様の中から飛び切り気に入った風船で、ふわふわとした手応えを楽しんでいる喜びの真っ只中、ふとした油断で手に絡めていた紐を手放してしまい、そのあとはただただ号泣したときの子供の頃と何の代わりもない気持ち。私の恋人はどうやら他の女を好きになってしまったようだ。最近、電話をかけても出なかったり、手紙を出しても、返事がなかったりしたのでおかしいなと思っていたが、もう後戻りできないところまで来ていて、もう私のところへは戻っては来ないようだ。彼はどうやら私とは全く真逆の健康的で年下のかわいい女の子にお熱を上げているようだ。彼はあの時の風船とちっとも変わらないように遠く遠くへとふわふわと風にもてあそばれていくように遠ざかっていく。でも、あの頃と違うのは私はただその事実の前に号泣するだけの女の子ではなくなったということだ。悲しみをしっかりと受け止めながら、遠ざかっていく風船を見送るだけ。あんな風船どこかに落下して朽ち果ててしまえばいい。そして、私はまた別の風船の紐を指に結わえるだけ。気に入ったと思っていた風船は私にはふさわしくなかっただけのこと。また違った魅力のある風船は世の中にごまんとある。あんな浮ついたしっかりとしない風船なんて、最初から私のものではなかったのだ。私は飛んでいってしまった風船は二度と許さない。私の手元から離れていくなんて、なんて傲慢な風船なんだ。私はこの風船しかないと気に入っていたのに。

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