淋しさ

淋しさを数えていった

ひとつ ふたつ みっつ よっつ・・・・

どこまでも際限なく 淋しくなりそうだった

草子がそんな僕に 淋しさを数えるもんではありません
そんなことをしては駄目 メッ するよ

おんなじ数えるなら 和菓子屋に行って
セイロに蒸しあがった まんじゅう数えに行こうということになって
近所の和菓子屋に行くことになった

それで 淋しさではなく まんじゅうを数えることにした

まんじゅうを口にほうばると
ぺろんって上あごにつくような薄皮の
それでもって、ほんのり黒糖の味がして
中にぎっしり あんこが入っている奴

草子は人気者のクラスメイトでも紹介するように
その近所の和菓子屋のまんじゅうの良さを説明してくれた

それで 和菓子屋のガラス窓に
ふたり へばりついて
あほみたいになって まんじゅうが蒸しあがるのを待っていた

和菓子のご主人が 草子に
そんなにまんじゅうが蒸しあがるのが楽しいかね?
そう質問した。

蒸しあがったばかりのまんじゅうには 世界を変える力があるの

草子は目をきらきらとさせて 和菓子屋のご主人を見つめた

和菓子屋のご主人はもちろん 草子のことをいたく気に入って
竹の皮にまんじゅうを六つ包んでくれた

達郎、淋しさを数えるより まんじゅう数える方がいいでしょ?
幼い弟を諭す姉のように 草子はそう同意を求めた

草子は淋しいときはないの?
僕は恐る恐る草子に尋ねた。
僕の目から見たら、草子は時々淋しそうに見える。

草子は僕の目を見つめながら
淋しさはひとの特権よ
淋しさってね・・・・
他のひとに甘えるためにあるのよ
だから、淋しいからって 不幸に考えることはないの
思いっきり甘えたいひとに甘えたらいいの
嫌われるなんて賢く考えなくてもいいの

達郎は淋しかったんでしょ?
私もとっても淋しかったの
ふたりこんなにいつも一緒にいて
喧嘩したり絶交しそうになったり仲良くしたりしているのに
それでも淋しいの
それはとても自然なことなの

淋しさはひとの特権よ

草子は決め台詞を言うように、うれしそうにもう一度言った
僕はすっかりうれしくなって
そして淋しくなくなって
草子と手を繋いだ

草子の手はひんやりと冷たかった

ほかほかのまんじゅうが冷めないうちに
草子が四個、僕が二個食べた
草子はことのほかおいしそうに食べていた
和菓子屋の主人は僕たちが食べている姿を見て
とてもうれしそうだった

草子は僕の手を少し強く握って
達郎の手はドラえもんの手のように温かいね
寿司屋の職人なら失格ね

そう歌うように朗らかに言った

そもそもドラえもんの手が温かいのかどうかも分からなかったが
そんな事はどうでも良いように感じた

分からなくていいことも世の中にはたくさんあって
思い込みで生きていて幸せなこともたくさんあるのだ

草子と僕は、まんじゅうを平らげたあと
栗まんじゅうを六個買った
草子の母親へのお土産にするつもりだった

ここの 栗まんは 絶品なのよ
どんなところが?って尋ねると

気に入っているほっぺたの方に栗がすとんと転がって入って
そこで栗がほっぺたの中で
いつまでも甘くほっこりしているところ

と朗らかに言った

分かったような分からないような・・・
でも、おいしそうだった

草子の手は僕の手のぬくもりで
寿司屋失格手前ぐらいまでは温まっていた

そうか・・・
寿司屋にならなくてよかったな~ってホッとした

数えるほどたくさんあった僕の淋しさは
草子の持つ淋しさと組み合わさって
優しい時間を生み出していた

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