苦しい胸中に転がる石を磨いて言葉に置き換えていく。死を見つめながら詩に変えていく。淀んだ沼に沈んでいた石は冷水に晒すことで、呪詛から歌へと次第に彩を変えていく。
首をくくってビールケース蹴るだけの段階まで来ても、胸中を言葉に変えることで、様相は変わってくる。生き方が詩人であればいい。美しい詩でなくてもいい。無様な生き方でもいい。引きこもった部屋から外の風景を眺める。誰にも止められない世界の動きの中で、息を潜めてここにいる。
だらしない容器になみなみと注がれた泥水。腐りゆく落ち葉の中に落下した椿の花。明け方白んでいく空に溶けていく星たち。自分を美しい者に仕立てようとして余計に泥だらけになった私。屑箱の中に捨てられたバナナの皮。
一瞬の輝きは永遠に葬り去られる。跡形もなく消えるならそれでいい。でも、もう少しだけ生きてみようと思う。私はただ死ぬのが怖いだけ。ビールケースを蹴って、梁にぶらんぶらんとぶら下がる自分に恐れを抱いているだけ。もう心はとっくに死んでいる。人様に誇れるものなんて何もない。私は詰まらない人間だ。